第25章

相澤おじいさんの言葉が口から出るや否や、藤原美佳はその場で声を失った。

彼の言葉は藤本康弘を名指しで非難するものだったが、そこにいる誰もが愚かではなく、本当に言いたかった相手が誰なのかを理解していた。

藤本康弘は口元に笑みを浮かべ、否定もせずにフルーツワインを一杯注ぎ、相澤おじいさんに謝罪の意を示した。

「お爺さん、康弘が悪かったです。どうかお許しください」

藤原美佳は藤本康弘の下座に座っており、彼と同じように謝るべきか迷い、場の空気は一気に気まずいものとなった。

樋口浅子はテーブルの前にあった酒杯を手に取り、微笑みながら一口啜った。

酸味と甘みが混ざり、フルーツの香りがする。思...

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